外傷の施術で気をつけなければならないこと
2017/09/21
先日、野球で一塁にヘッドスライディングした際に、親指をベースに引っ掛けてしまった高校野球部の選手が見えました。
怪我の発生状況は夢中だったためよく覚えていないとのこと。当日に救急で診て頂いて
レントゲンで骨折はないと言われたが、強い痛みが継続したためご来院をされたとのことでした。
ヘッドスライディングでの怪我は、指先からベースに突っ込んで、いわゆる突き指の形になり骨折や腱・靭帯損傷になるもの
親指を引っ掛け無理に開く形になり、これまた骨折や靭帯損傷するものなど、多岐にわたります。
患者様の状態は、骨折を示唆する極端に強い腫れはないものの、関節周囲全周に押さえた際の痛みが生じるため
触診では損傷部位の特定が確定できない状況でした。
ただ、親指付け根内側(MP関節尺側)の押さえた痛みが他部位との比較で強くみられました。
救急でレントゲン撮影はされていましたが、撮影時の状況を聞くと、親指部分の撮影で行わなければならない
ストレス撮影(ケガをされた状態を再現し骨傷や靭帯損傷を読み取るための撮影法)が為されていないこと、
来院時の固定の状態が、専門医の先生がされた感じではないことより
「母指MP関節尺側側副靭帯損傷」「同 靭帯付着部剥離骨折」の鑑別診断が為されていない可能性があると判断。
この部分の靭帯断裂や剥離骨折は、手術で繋げないと治らない部分です。
しっかりと患部を固定した上で、改めて整形外科の先生に紹介し、画像での鑑別診断をお願いしました。
結果、骨折はないものの、靭帯の断裂により、手術にて断裂部再建することに。
断裂・骨折の可能性を見逃していたら、一生残る機能障害を患者様に負わせてしまいます。
日々学び、鑑別能力を保つことが患者様のためになると、改めて感じる症例となりました。
術後のリハビリは当院にて担当。早期の競技復帰を目指します!
*画像は 南江堂様 刊 「整形外科痛みへのアプローチ3 肘と手・手関節の痛み」より引用いたしました。